平成5年11月

「与論町 町制施行30周年論文」(与論町)

論文の部 優秀賞 「『雪』と『星の砂』〜与論の未来への提言」

 

1.はじめに

その昔、黒潮とサンゴが恋をして与輪は生まれた。そして、天のめぐみ、潮(うしお)のめぐみ、地のめぐみ受けて与論は育ち、歴史がつくられ、世之主は響築いた。

 与輸は本年記念すべき町制施行三十周年を迎えた。これまで豊かでかつ厳しい自然環境の中でくりひろげられてきた先人の努力に対して、心から敬意を表するとともに、町勢のますますの発展を願うものである。

 そこで、私は同じ鹿児島県に住むものとして、与論の明るい未来に向け次のように提言したい。

 

2.与論の未来への提言

 国(厚生省)の試算では、全国的な少産化傾向により、今後100年近く人口の自然増加は見込めないとされている。また、多極分散型国土形成をうたった四全総(第四次全国総合開発計画)の国策展開にもかかわらず、大都市圏への一極集中と他方の高齢化、過疎化は加速している現状にある。従って、地方のまちづくりの基本的なラインとして爆発的人口増をかかげることは賢明でないと思う。与論のこれからの行き方は、むしろ「今あるものを生かすこと」と「交流すること」を大きな二本の柱にすべきであると思う。つまり、与論の歴史、自然、人を守り生かしながら、同時に与論の吸引力と発散力を高めていくのである。この考え方は、五全総の策定準備を進めている国(国土庁)が定住人口のみならず、まちの活性化あるいは元気度の指標として「交流人口のあり方を検討していることにもかなうものである。

 

(1)名を生かす○ヨロン大会

 「交流」を促進するためには、まずまちの名を広く知らしめることが第1である。そして与論へ行ってみたいという気をおこせるものをつくり出し、強くアピールすることである。すでに「日本最南端」という強烈なセールスポイントを沖縄にとってかわられている与輪にとって特に念頭におくべきことである。以前、日本中の若者を魅了した与輪でのサマーバカンスは一過性のブームとして語られている。だから、日本最南端以外のキーワードで与論をアピールし、永続的なヨロンブームを生み生み出す必要がある。そして、与論のアピールポイントとして、南国の海だけでなく秋期から冬期にかけて人を引きつけるものに着想することが大切である。このことは、夏期のみならず、通年型観光の振興につながると考えるからである。現在の与輪には、そのポテンシャルがあふれていると思う。名は体を表わし歴史の重さを示すものである。私は、与論活性化策の一例として世論(ヨロン)大会開催を提言する。 これは無論掛け言葉であるが、種々のテーマについて多様な人間が建設的意見(世論)を発表する場を与論につくるのである。開催については、世論が集約される新聞などマスコミや航空・海運企業等とタイアップして、いわば世論による与論興しを行い言論のメッカにしようというものである。ヨロン大会のテーマとエリアの組み合わせは無数にある。例えば選挙区合区問題においても大きくクローズアップされた奄美地域振興について、あるいは日本最南端沖縄と与論奄美地域の交流について、あるいは環太平洋のサンゴ礁保護についてなど、与論発展のため研究すべきことは数多い。

 

(2)自然を生かす 

ア、南北交流「雪と星の砂」

 暖かく恵まれた南の風土を生かし、又、与論の基幹産業である観光と農業振興に向けて、南北交流「雪と星の砂」事業の実施を提言する。雪と星の砂は各々北(に住む人)と南(に住む人)の象徴であるが、本事業の主眼は異なった環境にある人と人とのふれあい交流である。

 

(ア)広域圏交流のすすめ

 与論においては、奄美郡島広域事務組合に参画され活発な活動をされているところであるが、交流のあり方の一例として北海道南空知(みなみそらち)ふるさと市町村圏組合等との広域圏交流を展開してはどうか。異なった自然環境、異文化の風土は魅力あふれるものであり、人材育成、産業振興の観点からお勧めしたい。南北のコントラストとしては、与論の「サンゴ祭り・ダイビング・パパイヤ・黒糖焼酎等」に対し、北海道南空知は「ドカ雪まつり・スキー・メロン・ワイン等」があり鮮烈な印象を与える。又、与論から北のさわやかな夏祭り(八月)に赴いて地平線を望み、北海道から与論を訪れ水平線を見ながらヨロンマラソン(2月)に参加することは、双方面白い交流のあり方だと思う。

 

(イ)「ふれあい.ステイ」の拡充

 南北交流の一例として広域圏交流を前述したが、本年与論で実施された「ふれあいステイ」(民宿による農業青年との交流)は、これからも拡充させるべきと考える。島外から参加する女性が与論の土に触れ農業青年と交流することは、与論に後継者を育て農業を振興するための有効な手段の一つである。今後、北海道をはじめ大郡市圏にも女性の参加を広く呼びかけていってはどうだろうか。

 

イ.セカンドロマンの島 

日本人の平均寿命が伸び、又、地方の高齢化が進んでいる今日、高齢者がゆとりある環境の中で元気に暮らせる施策展開は必要不可欠である。本件については、島根県隠岐郡西ノ島町において高齢者のための桃源郷計画が打ち出され話題を呼んでいるところである。西ノ島では、都会で定年を迎えた高齢者を対象に移住希望者を募り、住宅・宅地の便宜を図りながら第二の人生を島で楽しんでもらおうと計画されている。

 私は「着想自体はは西ノ島方式と同様であるが、西ノ島が日本海に浮かぶグランドキャニオンなら、南海の与論は日本のミコノス島(ギリシア)としてアピールされることを確言する。与論の地中海的シーンは、人の心を激しく動かすものがあるからである。

 もちろん高齢者が与論に定性するための条件整備としては、島内における医療、福祉、文化、レジャー機能の充実もさることながら、民活による終身利用型の有料老人ホームの建設促進(誘致)を図ってはどうか。高齢者が都会にない美しく温暖な環境の中で、圃場で野菜、花きを栽培し、南国の長寿料理を食しながら、ゆとりとロマンある第二の人生を送るのである。与論をすなわちセカンドロマンの島にしようという発想である。

 私が垣間見た例としては、アメリカカリフォルニア州のラグナヒルズ・レジャーワールドコミュニティがある。

そこには、55歳から入居できるが、平均年齢76歳の高齢者2万1千人がいきいきとした快適な生活を送っている。温暖な気候の中に建てられた住宅(買い取り、リース制など)が準備され、200近い趣味スポーツの同好クラブが組織されている。高齢者が健康で生きがいと安心を感じるコミュニティの趣きがある。

 州政府の財政支援を受けないアメリカ的民間ペースの福祉の里といえるが、日本の地方都市にとって今後とも真剣に研究すべきテーマであると考える。

 

(3)人を生かす、青少年を育てる

 人材は人財であって、貴いものである。与論の明るい未来に向けて、与論に生まれた青少年を守り育てていく必要がある。そこで、私は青少年育成のあり方として、次の三つを提言したい。

 

ア.郷土出身者との交流 

青少年の生き方に指針を与えるものとして、東京など中央で活躍している郷土出身者と青少年との交流を図ってはどうか。与論高校を昭和50年に卒業した松村博文氏は私の親友であるが、現在東京において新進気鋭の弁護士として活躍している。例えば松村氏と与輪の青少年との交流会を実施して大都市圏の現状について、外から見た与論について、与論活性化について、意見交流を図ってはどうか。この交流は、多感な青少年にとって彼らの生き方や地域活性化についての多くのヒントを与えるものと確信する。

 

イ.海外研修 

国内交流については、これまでいくつか述べてきたが、私は今日の国際化ボーダーレスの時代にあっては、やはり青少年の海外研修実施を提言する。自然、言語、政治体制が日本と全く異なった外国にとびこむことが、青少年のグローバルな考え方を培うのに最良の方法である。地球の裏から日本あるいは与論を見つめなおすことは、青少年が世界的競争に打ち勝つための向上心を高め、日本人としての自覚を促し、ふるさと再発見につながると思う。

 

ウ.ふるさと教育 

優れた郷土出身者と交わり、又海外で見聞を広めることと併せて、ふるさと与論を愛する心を涵養することが21世紀に生きる青少年には求められる。外ばかりを見るのでなく与論城跡とサンゴ礁に愛着と誇りをもつことが、ゆとりある柔らかい心を生み出す。

与論の汚れなき自然を守り続けることはもちろんのことであるが、私は特にこの度の町制施行30周年を機に青少年に対する与論の歴史・ふるさと教育を実施されるよう提言する。過去と現在から明るい未来は語れるのであって、ふるさと教育での与論の生い立ち、歴史と先哲の努力を知ることが、青少年の心に与論への一層の愛着を生み、ふるさとの歴史が生み出してきた素朴な素朴な祭・行事も星の砂と一緒にコミニティの中で永遠に守られるべきものになるのである。そして、このようにふるさとを守り語り継ぐことが、若者の与論への定着に結びつくと考える。

 

3.おわりに

 与輪は、このたびの町制施行30周年を期にさらに飛躍し、「星の抄」を守り「雪」と交わりながら、人と自然にやさしい生活楽園になっていくものと思う。

 私は、ここまで与論の明るい未来に向けて「今あるものを生かすこと」と「交流すること」を軸としていくつかの提言をしてきたが、このコバルトブルーの与論の島が地球の壮大なサイクルの中で永遠に光輝き続けることを心から希望するものである。